2012-2013日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた、マツダCX-5。CX-5には、「走る歓び」「優れた環境・安全性能」を実現した、革新的技術『SKYACTIV TECHNOLOGY』が搭載されています。
『SKYACTIV TECHNOLOGY』の技術を用いた新車の開発計画において、現場が経営層から求められたのは、大幅な開発期間短縮という大きなチャレンジでした。この計画に、悪戦苦闘しながらCCPM導入を推進した元マツダ/田中義道氏。 田中氏に、CCPMを展開する為の秘訣を伺いました。

 

CCPMを推進するメンバーはどのようにして集めましたか?

CCPMに取り組んだときは、入社して25年以上経っていましたから、チームとして一緒に働いた人が多くいました。そこで一緒に仕事をした人に呼びかけ、仕事を上手く進める方法を考えるための勉強会、具体的には輪読会で色々な本や資料を読んでいました。その輪読会でTOC(-CCPM)が話題になり、その輪読会の中からメンバーが集まりました。ですからCCPMのためにと集めた記憶はありません。

 

CCPMの推進メンバーはどのように育てましたか?

輪読会でTOC-CCPM関連の本を読んだことが始まりです。
その人たちの中から希望者に(株)ビーイングの講習会に参加してもらい、今の状況を改善する有効な手段だと実感してもらいました。
また、上司にも今の状態を何とか変えたいという雰囲気がありましたから、幹部社員に対して、メールで定期的に風土改革やCCPMに関する記事をアナウンスしました。一方的なアナウンスですね、古株の特権です。

導入が決まると本部内でゼミを行いました。CCPMの理論編、実行編で約3時間くらいの講義です。そして参加した人を公表することで、「なぜ、我々のところは参加者が少ないんだ」という話になりますから、徐々に受講者は増えていきます。

 

プロジェクトにはバッファが必要だということを理解してもらう為に、どのようなことを行われましたか?

貴方は、タスクの安全余裕(=バッファ)を取り、「挑戦」する人をどのように支援しますか。「大丈夫だ!困った時には助ける」ですか。本当の意味で信頼関係ができているならこれで十分かもしれません。しかし、「本当の」は非常に希なことです。ですから具体的な「助け」を明確にすることが重要ですね。それが「バッファ」です。これが確保されているから「挑戦」できるんです。

また、時間を短縮することが最も大切だと考えている人に、「バッファ」という余裕が必須であることを理解してもらうことは難しいことです。バッファは短縮とは全く逆の対応ですから。この考えの始まりはヘンリーフォードの流れラインのスペースの余裕が始まりで、それを大野耐一さんが多品種少量生産に発展させた時にロットに置き換え、ゴールドラット博士が時間に置き換えました。この置き換えによりバッファの考えの適用範囲が大きく広がりました。「バッファ」の効果は百年もの間に証明された考えです。

「早い流れが欲しいならバッファが必要です」、まさに、パラダイムシフトです。
このような話も講習会などの機会に繰り返しました。このパラダイムシフトは本当の話ですから実際にCCPMを使うと理解できます。また本当のトヨタ式を勉強すれば理解できます。

ゴールドラット博士の小論「巨人の肩の上に立って Standing on the Shoulders of Giants」を読むと、ヘンリーフォード、大野耐一、ゴールドラットと続く考えであることが説明されています。一読を勧めます。