製品開発は困難がつきまとう。新規事業の新製品開発ともなれば、なおさらだ。リコーは新規参入である『ユニファイド コミュニケーション システム』事業の第一弾として、全く新しいポータブルタイプの、ビジュアルコミュニケーション機器の開発に成功した。しかも短納期・高品質で。どのようにして、困難な開発に成功したのか、その秘訣を伺ってきた。

■ユニファイド コミュニケーション』 市場にリコーが参入 5年で1000億規模

2011年2月7日、リコーは新規事業『ユニファイド コミュニケーション システム(UCS)』を立ち上げると発表した。5年後に1000億円規模の売上げ獲得を目標とする、巨大な事業である。
「いつでも・どこでも、だれでも・だれとでも、コミュニケーション」というコンセプトに基づき、時間・場所・人を選ばずに、遠隔映像コミュニケーションを可能にするとのことだ。
実際に、東日本大震災の際、UCS事業の第一弾となる『リコー ユニファイド コミュニケーション システムP3000(以降、P3000)』のプロトタイプを社内に急きょ投入し、関東の複数拠点と被災地の生産拠点を結んで、早期復旧に大きく貢献した。

■新規事業の新製品開発プロジェクトがスタート

開発プロジェクトリーダー浅井氏と、開発した『P3000』
開発プロジェクトリーダー浅井氏と『P3000』

2008年4月、小さなチームが産声を上げた。
後の「UCS開発室」の母体である。
今まで、一人用、もしくは、大きな会議室用のテレビ会議システムは存在していた。しかし5,6人で使うような、中間規模のシステムは存在していなかった。
「今までにない、手軽に持ち運べるビデオ会議システム」をコンセプトに、開発プロジェクトリーダーである浅井氏は、1年半をかけ、ゼロからの商品を作り上げた。

■開発・テストはCCPMで

本格的に開発プロジェクトが始動したのは、2009年4月。開発メンバーも20名に増え、試作品の開発に取り掛かる。
しかし、まだ海のものとも山のものとも分からない試作品である。基本設計段階では不確定要素が多すぎ、設計のやり直しは日常茶飯事。期間見積もりも読みにくく、とてもプロジェクトと呼べる状況ではなかった。
そこで浅井リーダーは、基本設計段階ではあえてCCPMを使わず、開発・テスト段階でCCPMを適用することにした。

■最新の手法を貪欲に吸収

更には、CCPMにアジャイルを組み合わせ、短いスパンで設計→開発→テストを繰り返し、2,3ヶ月の比較的短い期間でプロジェクトを定義し、バッファ管理を行うようにした。それにより、ウォーターフォール開発で発生しやすい、設計の手戻りを最小限に抑えることに成功した。
アジャイル開発は、品質の向上にも役立った。同社の他製品開発ではウォーターフォール開発を採用しているため、開発完了後にテストを行い、多くの不具合を発見していた。『P3000』開発では短いサイクルで開発し、テスト駆動開発を行ったため、頻繁に有効なテストを実施することになる。その結果、最終試作品での不具合が大幅に減ることとなった。
このことは、後にリコー社内に驚きをもって受け入れられ、「どうやって開発したのか?」と、大きな反響を呼んだ。

■CCPM運用の工夫

また、CCPMをプロジェクトチームに定着させ、迅速なマネジメントを実現することにも工夫を凝らした。
プロジェクトをハードウェア・サーバー・ファームウェアの3つに分割、必要に応じてモジュール単位に工程表を組み、バッファを監視することで、プロジェクトの簡素化・可視化を実践した。
プロジェクトをハードウェア・サーバー・ファームウェアの3つに分割
そして、工程表を作成するときのルールを決めた。「ネットワーク図の作成と、タスクの期間見積もりをする時は全員参加。1人でも欠けたら行わない。」これを『計画ゲーム』と呼び、CCPMの定着とともに、チームの一体感醸成や、見積もり精度の向上に大きく貢献した。
更に、タスクの数と粒度にもルールを定め、1プロジェクトのタスク数は100~120に抑え、1タスクの粒度は最低でも1日にした。タスクを細かくすると、かえって見積もり精度が低下する、マネジメントが上手く機能しないなど、実践経験から得た教訓である。細かい作業は、ToDoリスト化し、カンバンとして見える化も実施した。
プロジェクトをハードウェア・サーバー・ファームウェアの3つに分割

■CCPMの効果

開発プロジェクトリーダー 浅井氏と、開発した『P3000』
プロジェクト一覧画面

工夫をしつつCCPMを導入したことで、どんな効果があったか。
【1】ネットワーク図により、作業内容と、作業の依存関係が可視化され、プロジェクト全体が容易に把握できるようになった。
【2】クリティカルチェーンが可視化され、どのタスクに注力すべきか、どのようにリソースを割り当てるべきかが、明確になった。
【3】バッファの色(緑・黄・赤)で、進捗状況が早期に可視化され、問題が拡大する前に、迅速に対策を打つことができた。
新製品開発は、とかく「見えにくい」ものである。それをCCPMで徹底的に「可視化」したのである。

■驚くべき成果

新規市場参入という、極めて困難なプロジェクトだったにもかかわらず、『P3000』の開発は、予定通りに完了することができた。
新製品開発は往々にして予定をオーバーすることは周知の通りだが、『P3000』は、新規事業の第一弾製品として、想定以上の短納期・高品質を果たし、商品開発を完了したのである。

■CCPMの継続運用へ

『P3000』
リコー ユニファイド コミュニケーション システム 『P3000』

こうしてCCPM&アジャイル開発に自信を深めた浅井氏は、『P3000』の改良プロジェクトにおいても、CCPMを運用していく予定とのことだ。
ウォーターフォール開発が主流のリコー社内においても、徐々にCCPM&アジャイル開発に注目が集まり、新製品開発におけるリードタイム短縮に向けて、大きく舵を切る日も、近いかもしれない。

■プロジェクト管理 事例 PDFファイルのダウンロード

プロジェクト管理 事例PDF CCPM事例紹介 株式会社リコー NA事業部 PJ・UCS事業センター UCS開発室様のファイルをダウンロード

Company Information  株式会社リコー

●所在地:東京都中央区銀座8-13-1 リコービル ●設立:1936年2月6日 
●資本金:1,353億円(2011年3月31日現在) ●従業員:連結: 109,014名(2011年3月31日現在)
●U R L:http://www.ricoh.co.jp
●『P3000』の製品情報:http://www.ricoh.co.jp/ucs/P3000/

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