ITによる医療革命
難易度の高い医療分野でのシステム構築プロジェクトを、無事に成功させることができた。段取りネットワークを利用し、プロジェクトメンバーの協力体制を強化。さらに、会議時間を短縮することで、通常医療業務に負担をかけることなく進めることができた。

■院内がん登録とは

探索臨床腫瘍学講座 准教授 柳原 一広氏
探索臨床腫瘍学講座 准教授 
柳原 一広氏

2006年に「がん対策基本法」が成立し、がん登録制度の推進および向上が定められた。また2007年には、文部科学省「がんプロフェッショナル養成プラン」が発足し、京都大学を含む複数大学で、高度ながん教育を推進しはじめた。
京都大学病院では、この2つを推進するため、2007年10月、電子カルテおよび病理システムと連携する院内がん登録システムを構築するプロジェクトを発足した。このプロジェクトには、がん治療に関係するいろいろな診療科の医師・病理診断医・腫瘍登録士がメンバーとして選ばれた。実質的プロジェクトリーダーとして、がん登録システムを先行運用していた探索臨床腫瘍学講座 准教授 柳原 一広氏が任命された。

■医療現場におけるプロジェクト運営の難しさ

探索医療センター検証部 山本景一氏
探索医療センター検証部 
山本景一氏

このプロジェクトでは、探索医療センター検証部の山本景一氏がITに関する事項の取りまとめを担当した。山本氏は、前職の大手IT企業でプロジェクトマネージャーとして様々な企業のプロジェクトを経験している。その山本氏の経験の中でも、医療分野のプロジェクトは、きわめて難易度が高いそうだ。なぜならばプロジェクトメンバーとなる医師は、プロジェクト期間中も担当患者の治療を行ったり、大学内での研究・教育も行っているため、どうしてもプロジェクト業務の優先順位が下がってしまうからだ。さらに今回のプロジェクトでは、複数の診療科が関係しているため各診療科間の調整が必要となる。

また、既存システムの電子カルテおよび病理システムとの連携があるため、それぞれのシステムを担当するIT企業との調整も必要だった。その上、公的機関のプロジェクトのため予算は2008年3月までしかなく、延長することは許されなかった。 あらゆる面で厳しいプロジェクトだったのである。

■計画策定を十分にとり、全員の意識をあわせる

段取りネットワーク
段取りネットワーク

山本氏はプロジェクトを成功させるため、あえて全期間の約1/3を計画策定にあてた。単に法律に対応できるシステムというだけではなく、本当の意味でがん治療に役立つ仕組みを作りたかったためだ。システム完成後の運用についても充分に気を配った。そんな折、山本氏は前職の時から興味のあった『Being Management CCPM』がこのプロジェクトに合うのではないかと思い、柳原氏と協力して進めることになった。特に効果をだしたのは、段取りを考えるネットワークだった(図参照)。

ネットワークにより、メンバーが各々どんな仕事を担当し、他の仕事にどう影響を与えるかが明確になった。プロジェクトがスタートした後も、忙しい担当医も、優先順位を意識しながらプロジェクト業務を進めることができた。

■進捗会議は1時間以内に終了

進捗に用いたエクセル
進捗に用いたエクセル

ネットワークの完成後、山本氏はWBSの知識を生かした進捗表をつくった(図参照)。一目でプロジェクトの状況がわかり判断しやすいという成果を生んだ。進捗会議を2週間に一度開催していたが、30分〜1時間以内できっちり終了することができた。「以前のプロジェクトでは、長時間かけて会議をしても決まったことは少ししかないということがよくあった。」と柳原氏。プロジェクトメンバーが協力的に進めることができたのは、会議時間の負担がなかったこともあるかもしれない。

■遅れたタスクは1つだけ

完成したがん登録システム
完成したがん登録システム

結果としてほぼ計画通りにプロジェクトをすすめることができた。3月にシステムの完成。4月〜6月にかけて試行運用を開始。6月〜9月は本番環境での運用を開始。9月からは「がん登録運営委員会」が発足する。柳原氏は委員長としてデータベースをがん研究・治療に役立てることになっている。

遅れたタスクは、“運用規則の策定”1つだけだった。当初から遅れるリスクも想定できたので、他のタスクへの影響を最小限に食い止めることができた。
「自分の経験の中で、ここまでうまくいったプロジェクトは他に無い」と柳原氏・山本氏はともに語っている。今回のプロジェクトについて、早速他の病院から見学の問い合わせがあるなど医療業界に大きな影響を与えている。また、近々論文も発表される予定だ。

■プロジェクト管理 事例 PDFファイルのダウンロード

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Company Information  京都大学医学部附属病院

基本理念である(1)患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する。(2)新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する。(3)専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する。を常に念頭において、絶えず進化する医療に適応する京大病院を目指して日夜努力しています。

●所在地:京都市左京区聖護院川原町54 ●設立:1899年7月
●診療科:40 ●病床数:1,182 ●U R L:http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

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